「でもまあ、真澄はどぎつい色よりも、そういう柔らかくて明るい色が似合う」

「なんかそれ、おじさん……いやむしろお父さんみたいな発言に聞こえるんだけど」

「こら、許嫁をお父さん呼ばわりはやめろ。普通に傷つく」


 先に言ったのは翡翠の方なのに、と唇を尖らせると、少し拗ねたような声が返ってくる。


「そりゃ真澄からしたら、充分おっさんだろうがな」

「見た目は若いのに?」


 お日様に透き通るような金髪も、どこかミステリアスな光を宿した銀の瞳も、妖艶で端麗すぎる容姿も──少しばかり古臭い口調を除けば、おっさん要素は皆無だ。


「人と神ではそもそもの基準が違う。神々の中じゃ俺など若輩者の部類だが、人から見ればそこそこの年月を生きているし……いや、まあ、比べる必要もないだろ」

「そうかなあ」


 やっぱり神さまの中でも年齢の基準はあるらしい。

 人の子には到底わからないものだろうなと諦めながら、人と神の違いを改めて実感する。

 寿命を考えたら、それこそ比べるまでもないんだろう。私には知り得ないほど長く時を生きている翡翠にとっては、今この瞬間も、未来の記憶にすら残らないかもしれない。

 ……少し寂しい、と思うのは、お門違いかな。


「でもおっさんがそんな絶世のイケメンだったら、世の女子はみんな発狂してるよ」


 これ以上余計なことを考える前に、さっと話題を変える。


「それに、私の知ってるおじさんは最新機器を使いこなしたりしないから。スマホを操るのだって精いっぱいだし……ましてや、人のブログを見たりしません」

「ブログといえば、一昨日の晩に更新してたな。通知がきて飛びついた」

「うっ、気づくのが早い。というか通知までオンにしてるの?」


 何となく、日々のことを残しておく日記としてブログをはじめたのは数年前。

 私の日常のほんの少しだけ、悟られない程度の不思議な出来事をそれっぽく書いただけのものだ。読者なんて数えるほどだし、私だって最近はやっていなかった。

 しかし、なにかと「ブログは書かないのか」と訊いてくる翡翠に根負けして更新してしまった一昨日の晩。内容はこれまでと変わらない、日常の一角を書いたちょっと不思議な今日この頃のお話だ。さすがに、かくりよのことは伏せているけれど。