私の隣にコハクが、向かい合って時雨さんとりっちゃんが、上座に翡翠が座った状態で五人そろって手を合わせる。いただきますという言葉は、うつしよでもかくりよでも食事には欠かせない挨拶だ。


「パパちゃま、こんにゃく! こんにゃく、六花がやったのよ!」

「これか? なんだか凄い形をしてるな。ぐるぐるじゃないか」

「ねじりこんにゃくにするだけで煮物の見た目が映えるの。ほら、りっちゃんのおかげでオシャレな筑前煮になってるでしょう?」


 どういう仕組みだと眉根をよせて真剣に考える翡翠に、りっちゃんは必死に作り方を説明する。

 昼間のダメージを引きずってしまったらと心配していたけれど、この分だとだいぶ回復しているようだ。良かったと安堵して、私はほうれん草の白和えを口に運ぶ。

 ちなみに今日は、野菜中心の和食メニューだ。

 主食は定番の釜炊きご飯、汁物は大根と白菜の赤味噌汁、主菜にタラの味噌焼き、副菜に筑前煮、ほうれん草の白和え、きゅうりとわかめの酢の物。

 筑前煮は、かくりよに来てはじめて時雨さんから祖母の味付けを教わった料理だ。
じゃあまずは、と言われるがままに教えてもらったのだが、後から翡翠の好物が筑前煮だと知って妙に気恥ずかしくなった。変なところに気を回してくれるんだよね。


「それにしても、やっぱり真澄さまの料理は美味しいですね。とくにボクはこのお味噌汁が好きです。なんだか、香りがいつもと違うような……?」

「うん、今日のは赤味噌を使ってみたの。このまえ姫鏡が居酒屋のお客さんにもらったのを分けてくれたんだ。お味噌屋の美味しいお味噌ですわって言ってた」


 相変わらず私を見かけるたびに抱きついてくる姫鏡には困ったものだけど、どうやら浅葱さんとは上手くやっているらしい。付き合っているのかまでは分からないが、浅葱さんも満更でもないようだから、きっとそのうちめでたい報告があるだろう。

 付喪神と烏天狗とはいえあやかし同士、相性が合うのなら『結婚』だって……。