「真澄ちゃまぁ……! ごめんなしゃい、六花が、六花が……っ」

「ううん、りっちゃんはひとつも謝ることなんてないんだよ。なんにも悪くないんだから。私こそ、本当にごめんね。そばにいてあげられなくて」

「ちがうの、六花がわるいの……っ! 六花が、だめな座敷わらしだからぁ」


 うわあああと声をあげて泣き出したりっちゃんを、私は強く抱きしめる。

 いつも明るくて、なにをするにも楽しそうに笑っているりっちゃんに、あんな辛い過去があったなんて知らなかった。考えたこともなかった。

 こんな小さな体でズタズタになるほど心を傷つけられながら、それでも必死に生き延びて笑っていたから。その笑顔が苦悶に歪むところなんて想像しただけで悲しい。

 私はりっちゃんを、どう受け止めてあげるのが正解なんだろう。

 私はこの子に、なにをしてあげられるのだろう。


「ねえ、りっちゃん。ひとりは寂しいと思う?」

「ぐすっ……えっ……?」

「私はね、さっきすごく寂しかったの。最近楽しかったからかな、久しぶりにひとりになったら、心にぽっかり穴があいたみたいになって。りっちゃんはどうだった?」


 りっちゃんは少し考えるように涙を拭ったあと、曖昧に首を傾げる。


「……真澄ちゃまがきて、うれしかったってこと?」

「そっか。……うん、そうだよね」


 りっちゃんは、私に少し似てるんだ。幼い頃から周囲に疎外され、たったひとりで誰にもわかってもらえない苦しみをたくさん我慢して乗り越えてきた。

 けれど、だからといって、ひとりに強いわけじゃない。寂しくないわけじゃない。


「でもパパちゃまは、真澄ちゃまにヤなこと言ったからきらい……」

「⁉ あ、あれは私を心配してくれただけだよ。いじめてるわけじゃないからね」

「……そうなの?」

「うん、そうそう。だからパパ、嫌いにならないであげて」


 ムスッとしながらとんでも発言をしたりっちゃんに、私は焦ってフォローをいれる。

 隠しながらも、いや隠しきれないくらいりっちゃんを溺愛している翡翠が今の言葉を聞いたら、さすがに傷つくだろう。しばらく部屋にこもって出てこないかもしれない。

 さすがにそれは可哀想――というか私のせいで申し訳なさすぎる。