「ようやくお逢い出来ましたね、真澄さま」
まるで鈴が鳴るような、優しく透き通った声が私の名前を呼ぶ。
長いことこの瞬間を待っていたかのように、どくんと心臓がより大きく音を立てた。
呆然とする私の視界に入ったのは、跪き、深くこうべを垂れるひとりの少年の姿。
染みひとつない白い狩衣から覗く青みがかった単衣と袴は男物だ。
「……白、ヤモリちゃん?」
真っ白に染まった雪のような髪。やや癖のありそうなその髪から、ひと房だけ長く伸びている部分は、寸分違わず整った三つ編みで肩から胸へと流れている。
私の戸惑いの声にそっと顔を上げた彼は、どこか見覚えのある琥珀色の丸い瞳を細めて、まるで天使のような微笑みを見せた。
「この姿では、お初にお目にかかります。ボクは式神黙示録第二八代にして式神最高位──名はコハク。主様との契約のもと、いまここに参上致しました」
「え……あ、はあ……」
「コハクという名前、とても綺麗な響きで気に入りました。ボクのような者にはもったいないくらいですが、ありがたく頂戴いたします。一生、大切に使わせて頂きますね」
本当に嬉しそうにコハクは顔を綻ばせる。
「それはそうと真澄さま。さっそくで申し訳ありませんが、少々ご無礼をお許しください」
状況を呑み込めず、未だほうけている私のもとへやってくると、コハクは「お召し物が汚れてしまいますゆえ」と腰が抜けたままの私を抱き上げた。
私よりも小さい体で軽々とお姫様抱っこをしてみせたコハクは、そのまま土のない石畳へと私を運び、そっとおろしてくれる。
「土よりかはいくらかマシですから。大丈夫ですか、真澄さま」
「だ、大丈夫だけど……びっくりして。だって、あの白ヤモリちゃんが男の子だったなんて……しかもこんな天使みたいな──」
思考停止状態から抜け出せず、回らない頭で素直に思ったことを口にしてしまう。
ややあってから、私は男の子相手にとんでもないことを言ってしまったのではないかと気づき、はっと両手で口を抑えるが時すでに遅し。
しかしコハクは特に気にした様子もなく、それどころか少し照れたようにはにかんだ。