深い深い海の底を流れるままに揺蕩う。ぼんやりと目を開けば、暗闇にほんわりと浮かぶ今にも消えてしまいそうな淡い光の中に『誰か』の姿が見えた。

 ゆらゆら、ゆらゆら。

 あれが誰なのか、私には分からない。ふたりいるのだろうか。

 片方がこちらへ手を伸ばしてくる。どこか戸惑いながら、ひどく躊躇いがちに。

 けれど彼は、触れるか触れないかのところでその手を引っ込めてしまった。

 ──どうして?

 私は思わず手を伸ばす。


『……いつかその時が来たら、必ず迎えに行く』


 ああ、行ってしまうのか。

 私を置いて。

 そうだ、みんなどこかへ行ってしまうのだ。

 私を置いて。

 いつか……なんて時間はないと、私は知っている。

 この世界に信じられるものなんてないと、私は知っている。

 ──だから。