「……封印、出来たの?」
吸い寄せられるように黙示録を拾い上げ、ぎゅっと胸に抱きしめる。
その瞬間、安堵からか一気に身体の力が抜けた。汚れることも構わずに地面にぺたんと座り込んでしまう。全身がどっと疲れていて、思わず口からため息が零れ落ちた。
「上出来だ。さすがに弥生の孫だけある」
頭にぽすっとなにかが触れ、同時に聞き覚えのある名前が耳をついてぴくりと頬が動く。
「──あなたは、誰なんですか?」
振り向くに振り向けないまま問いかけた。
そこにいることはわかっていても、認識してはいけないような気がした。
私のような人間が見てはいけないものだと私の中のなにかが言っていた。
今さらかもしれない。けれど、訊かずにはいられなかった。
「……おばあちゃんを知ってるの?」
その問いかけに、彼は私の目の前にやってくると迷う様子もなく土の上に膝をついた。驚いて私が息を呑んだ刹那、彼の冷たく美麗な指先で顎をすくい上げられる。
細められた妖艶な目に真正面から射すくめられ、反射的に呼吸が止まった。
「つれないな、真澄。ようやく会えたというのに」
視界に入ったのは、まるでシルクのようになめらかな金色に彩られた髪と、不思議な形をした銀色の瞳を持った男性だった。人間離れした端正な容姿と腰を折っていてもわかる長身のスタイル。身につけているのは、見るからに上質な深緑の着物。
思わず見惚れてしまうほどの『美しさ』をまとった彼に、私は次の言葉を失った。
「質問に答えてやりたいところだが、その前にひとつ俺からも聞きたいことがある。重要なことだ。非常にな」
やけに念を押されて、私は浅い呼吸をさらに詰まらせそうになる。