「──で、肝心のヤツはどこにいる?」
翡翠の言葉に、笹波様が目を細めて枝垂れ村の方を見つめ、ややあってから「ああ」と声をあげた。ずっと下の方を指さして、それはもう癖のように舌打ちを落とした。
「封印石のすぐ近くだな。やっぱ石からは離れたくねぇってか。可愛らしいこった」
こんなに遠くから見えるなんて、どれだけ視力が良いんだろう。私にはかろうじて村の全貌が見える程度だというのに。さすが人の子とは身体の作りが違うらしい。
素直に感心しながらも、私は緊張を誤魔化すように唇を引き締めた。
出来ることなら誰ひとり怪我をせず、みんな無事に柳翠堂へ帰りたい。無事を祈って待っていてくれているりっちゃんや、時雨さん、姫鏡のためにも。