「でも、きっと私だけじゃ成し遂げられません。みんなの力を借りなきゃ、正直なところ現地に行くまでの勇気も出ない。……だから、一緒に行ってください」


 強気に出たくても出られない。結局はそれが私。いや、それが本当の私なのだ。

 これまでは、助けてとそう言える人がいなかった。

 怖い、嫌だ、そんな思いを打ち明けることが出来る人もいなかった。

 だけどこの世界には、どんなに情けなくなる時があっても、私の背中を優しく包んで押してくれる存在がいる。もうひとりではないのだと、そう感じさせてくれるみんながいる。

 だから私は自分の心と向き合えるようになった。

 そのおかげで、自分を少しだけ信じられるようになった。

 それがここに来て変わったことの一つだ。


「ふっ……素直じゃねぇか」


 可笑しそうに吹き出した笹波様はガシガシとやや乱暴に私の髪をかき混ぜる。


「そういう女は嫌いじゃねえ」


 笑うと意外にも無邪気な顔をするのだな、と思う。

 今日初めて見た笹波様の笑顔に、ようやく私もほっと身体の力が抜ける。



「……真澄に気安く触れてくれるな、笹波」


 しかしそんな笹波様の手を掴み、なおのこと苛立ったように突き飛ばした翡翠は、怖いくらい真剣な顔で私を見下ろした。目が焼けるのではと思うほど真っ直ぐに視線が絡み合う。


「──本当に、やる気なんだな?」


 なにもかも見透かすような銀色の瞳に射すくめられて、私はごくりと唾を飲み込んだ。


「うん。時雨さんの言葉を信じてみようと思う」

「……危険だぞ? 死ぬ可能性だってある」

「わかってる。……だから、翡翠も一緒に来てくれる? きっと心強いから」


 そう精一杯笑ってみせると、翡翠は驚いた顔をして目を見張った。戸惑いを浮かべ迷ったように顔を伏せてから、葛藤を断ち切るように首を振る。


「………まったく、真澄には敵わん」


 次の瞬間、翡翠にふわりと抱きすくめられた。

 一瞬なにが起きたのかわからず硬直する私の耳元で、翡翠は優しい声音で囁く。


「真澄が決めたことならもう何も言わない。おまえのことは必ず俺が守る」

「ひ、翡翠……」


 ──嬉しいけど、さすがにみんなが見ている前で抱きしめられるのは恥ずかしい!

 わたわたしながら離れると、りっちゃんが「六花もー!」と翡翠に飛びついた。

 いつものことながら面食らった顔をする翡翠を見て、傍らに控えていたコハクがくすっと笑う。事の次第を見守っていたようだが、コハクの表情には小さな決意が見えた。