「いるならとっとと出てきやがれ。んで、テメェの嫁? どんなもんかと思えば、そんなちんちくりんかよ。神も堕ちたもんだな」
「……そうか。今すぐその息の根を止めてやる」
「わーわー! 待って、待って!」
これは本格的に大戦争がはじまりそうな予感を覚えた私は、慌てて翡翠の前に飛び出した。ふたりの間に割って入り、これ以上近づけさせないように両手を広げる。
怖いと思う気持ちは隠せないが、それよりもこれ以上お店を破壊されるのは我慢ならない。座敷村の男に壊された部分が直ったばかりなのに、さきほどこの男が飛んでいったせいで、すでにお店の三分の一が大破してしまっている。どうしてくれるんだろう。
「翡翠、知り合いなんでしょ? 私のことは良いからちゃんと要件聞いて。喧嘩したいだけなら外でやって。そして早く帰ってもらって。これ以上、壊さないで」
さすがの私でも二度も『ちんちくりん』と言われたことには腹がたっていた。初対面だというのに、なんでそんなことを言われないといけないのか。
自分がちんちくりんだと自覚しているがゆえに、なんだかとっても気分が悪い。
翡翠は私の言葉で少し冷静になったのか、それとも珍しく私が怒っているのに驚いたのか、とたんに動揺したように瞳を揺らす。
「ま、真澄……」
「なんだテメェ、尻に敷かれてるじゃねぇか」
がはははと馬鹿にしたように笑う男に、さすがにかちんとくる。
「……なんなんですか、あなた」
全身に最大威力の霊力をまといながら睨みつけると、男はふっと真顔になった。
一瞬だけ驚いたように私を凝視し、そのまま辺りに蔓延る霊力を思案気に見て「へえ」と面白そうに声を落とす。さっきとは打って変わった興味の眼差しに思わず後ずさった。