仕事内容としては、言葉では説明できない現象を陰陽道に則って調査し、検証と推理を重ねて吉凶を占い、依頼主にどう解決したら良いかのアドバイスをする──いわゆる占い屋のようなものだったと聞いている。さらに天文道に則って占星術を行ったり、気象予報を行ったりと、とにかくその振り幅は大きかったらしい。

 けれど、それはあくまで公にされている表向きの陰陽師の姿だ。

 祖母から聞いた話、陰陽師はその昔、朝廷の国家公務員として働く傍ら、裏では呪術を用いた祓い屋として暗躍していたそうだ。

 妖や悪霊など人ならざるモノを相手に、さまざまな式神を自在に操って呪術を駆使しながら対峙する。悪霊祓いはもちろん、恨みつらみなど負の力を利用して憎き人間に呪いをかけたりすることもあったという。なかには人を殺すほどの力を持っていた陰陽師もいたらしいが、本当の話かはわからない。そのくらい、術者の力は謎に満ちていた。

 そしてそんな陰陽師の二大勢力と言われていたのが、かの有名な安倍晴明を筆頭とした安倍家と賀茂家だ。言わずもがな、賀茂家は私のご先祖さまである。


「……真澄さん」


 歴史に名を残すほどの偉大な陰陽師を直系に持つとはいえ、正直なところ自分にそんな力があるとは思えない。陰陽師の末裔と言われてもピンとこないのだ。

 たしかに私にも霊力はあるし、あやかしを見ることが出来る体質だが、人を殺すほどの力なんてあるわけもない。術者としては、せいぜい結界を張るのが関の山。

 推測するに、長い年月の中で薄れた血と比例して、霊力もだんだん弱くなってきているのではないだろうか。祖母が私に『式神黙示録』の存在を知らせなかったのも、きっと式神を操れるほどの力がないと判断したからで──。