「真澄に似合いそうな柄だと思ったんだが……」


 翡翠にしては珍しく自信なさげで、少し不安そうに差し出された紙包。

 中身が鏡だとはわかっているのに、久しぶりの贈り物にはやっぱり緊張した。

 どきどきしながら受け取ると、わずかばかりの重み。目が合うと頷かれたので、さっそくその場で封を開けてみる。慎重すぎるほど丁寧に梱包を剥がし、中から顔を出したものに私の口から「わっ」と感激の声が漏れた。

 春を彷彿とさせる淡い桃色の丸鏡。前に持っていたものと比べると一回り小さなコンパクトサイズだ。枠は桜の形に縁取られ、裏面を覆う布地には鞠が跳ねるように描かれている。

 和風ながら上品な女の子らしいデザイン。これまで持っていた鏡は茶ベースの落ち着いた色合いだったこともあり、若さを感じられるその色に胸が躍る。

 今や姫鏡となってしまった鏡とはまた系統が異なるけれど、細部の柄まで丁寧に縫い込まれた刺繍や磨き上げられた鏡面に、私は一瞬にして目を奪われる。


「可愛い……!」

「気に入ってもらえたか?」

「うん、とっても!」


 こんなに可愛いものを私が持っていても大丈夫だろうか──という一抹の不安はあるものの、翡翠が選んでくれたと思うとなおさら大事にしようと思えた。

 やっぱり化け狸のおばちゃんが言っていた通りだ。贈り物は自分で選ぶより誰かに心を込めて選んでもらったものが一番嬉しい。ここに込められた想いが伝わってくるから。