遠まわしだけれど、そう言われたような気がした。
もしかしたら翡翠には、さきほど私が考えていたことも全てお見通しなのかもしれない。
そのうえでおまえだけじゃないと、そう伝えてくれているのかもしれない。
人も、妖も。その言葉の裏に隠れた優しさに戸惑っていると、タイミングが良いのか悪いのか白玉クリームあんみつが運ばれてきた。現金なことに、私の頭から一瞬にして邪念が転がり落ちる。さらに次いで現れた翡翠のぜんざいにより、完全に煩悩化した。
艶やかな小豆、大きくてたんまり盛られた白玉、色とりどりの寒天に、そっと添えられた真っ白なクリーム。見た目だけでも完璧な白玉クリームあんみつに、たまらずほうっと息が零れる。
これは、間違いない。一級品だ。食べるのがもったいないくらい美味しそう。
「そんなに甘いもの好きだったか?」
目を輝かせて真剣に白玉クリームあんみつと向き合う私がおかしかったのか、翡翠がおかしそうに喉を鳴らしながら尋ねてくる。
「うん、甘いものは大好きだよ。でも好きすぎてつい食べ過ぎちゃうから、あまり自分からは食べないようにしてて。ほら、お財布事情もあるし」
「うん? 太るのを気にしてるなら、むしろ真澄はもう少し肉をつけた方がいいくらいだろう。懐なら俺がいる今なにも心配することないし、これからは好きなだけ──」
「い、いいの! たまに食べるのが美味しいんだから!」
ここぞとばかりに甘やかせようとしてくる翡翠を遮り、両手を合わせる。
「いただきますっ」
私は食べたら食べた分だけ太る体質だ。そんなことをした暁には、鏡の前で大絶叫をあげる羽目になるのは目に見えている。二十を過ぎた女子の体を舐めないでもらいたい。
ただでさえかくりよへ来てから毎日三食、それはそれは規則正しく時雨さんの美味しい手料理を食べているせいで、最近少し顔が丸くなってきたように感じていたのに。
しかし、そんな後ろめたい気持ちも一口目を頬張った瞬間に吹き飛んだ。頬が落ちるほど美味しい白玉クリームあんみつを堪能しながら、私は心の中で感謝感激の涙を流す。