「どうしたっちゃ、真澄」
私の腰ほどの背丈しかないけれど、さらさらの毛皮に丸みを帯びた顔、ピンと尖った長い耳が特徴的な彼は『さとり』という妖怪だ。見た目は可愛いが、本人曰く意外と年配らしい。
「お、おっちゃん」
「ほほう、旦那から贈り物をしてもらえるのは嬉しいけど、あんまり甘やかされたらもっと好きになっちゃう!っちゃね〜。へへへ、そんりゃあずいぶんとめんこい悩みっちゃ」
「ちょっ、勝手に心読まないで……!」
けらけらと悪気のない顔で笑われ、風にあたって冷めかけていた顔の熱が再発する。
うう、しまった。おっちゃんの前では隠し事が出来ないんだよね。
さとりは人の心を読む妖怪だ。優しいおっちゃんなのは間違いないのだが、こうして少し隙を見せると平気で心の中を覗かれてしまうから油断ならない。
「まあまあ、許すっちゃよ。そうだ、せっかくなら真澄からも旦那にプレゼントを贈ってみたらどうっちゃ? きっと喜んでもらえると思うっちゃよ」
「私から?」
思わぬ提案だった。まさに目からうろこ、棚からぼた餅で、私は顔を覆っていた手を退けておっちゃんを見る。よほど呆けた顔をしていたのか、おっちゃんは可笑しそうに笑う。
「そうっちゃ。感謝の気持ちは言葉でも伝わるっちゃが、たまには心のこもったプレゼントも一緒に贈ると効果倍増っちゃ。ほら、うちの扇子なんかプレゼントにぴったりで……」
「か、買います! 買わせて頂きます!」
「へっへ、まいどありっちゃ〜!」