「これ、母親に?」
もう完全にしおれてしまったシロツメクサとクローバーを見つめる。
するとチビは、俯いたままコクンと小さく頷いた。
「病院の場所、知ってんの?」
チビはやっぱり俯いたまま、弱弱しく首を横に振った。
「じゃぁ、行けるわけねぇだろうが」
呆れた声でそう言うと、チビが顔を上げた。
「でも、行き方はずっと前におじさんに聞いたの。バス停から5番のバスに乗るって。朔、ずっと待ってたんだけど、5番のバスは病院に行かないって……朔、聞き間違えたのかな?」
チビが俺を見上げながら、必死な声でそう問いかける。
俺は必死な形相で見上げてくるチビから視線を逸らすと、
「わかんねぇよ」
と素っ気無い声で答えた。
チビはしばらく俺を見つめたあと、失望したように視線を下げる。
チビは俺の手からしおれたシロツメクサの花とクローバーを受け取ると、それらを本の間に挟みなおした。