「人、いっぱいいるんだけど」

さすがにちょっと周りを気にしながらそう言うと、俺の胸に顔をうずめて奈未がクスクス笑う。


「別にいいよ」

俺の口調を真似て、今度は奈未がそう言う。


俺は口元に苦笑いを浮かべると、奈未の髪をそっと撫でてやった。


「ねぇ、ハルヒサ。今日は寄って帰る?」

奈未が唇に艶っぽい笑みを浮かべて俺を見上げる。

その笑みを見て、奈未が俺に何の誘いかけをしているのかがすぐにわかった。


奈未の誘いかけに頷こうとした俺の頭にふと一瞬だけチビの顔が掠める。

バイトはないから時間はあるけれど、今日は4限まで講義があったから多分小学校はもうとっくに終わっている。


あんまり遅くなると、腹減るかな……


「ハルヒサ?」

ちょっとそんなことを考えていると、奈未が不思議そうな顔をして俺の名を呼ぶ。