リビングへ連れて行こうとチビの腕を引っ張る。
けれど、チビは頑として動こうとはしなかった。
「行かねぇならほっとくぞ」
俺が一人で立ち上がろうとすると、チビが俺の服の裾をものすごい力でぎゅっとつかむ。
その手が尋常じゃないくらいがくがくと震えていて、ぎょっとした。
「おい、お前。大丈夫か?」
俺の服の裾をつかんだまま震えているチビは、それでも泣いてはいなかった。
「あぁ、もう。何なんだよ……」
ため息をつきながら、首筋をかく。
「そんな怖いの?」
尋ねるとチビは、強情にも大きく首を横に振った。
それで、俺の口からまたため息が漏れる。
「どっちだよ。っていうか、怖いなら怖いって思ったこと口に出せばいいじゃん。ガキのくせに」
何を言ってもチビが俺の服の裾を離さないから、仕方なく俺も脱衣所の床に尻を落とす。
狭いから、足を浴室の外に続く廊下に投げ出す。