ドアを開けると、浴室の狭い脱衣所にチビが膝を抱えて小さく蹲っていた。


「おい。何でこんなとこにいんだよ」

膝を抱えるチビの腕を揺する。

するとチビはひどく驚いたようで、額を膝に押し付けたまま大きく身体を震わせた。


「おい。俺だって」

膝を抱えているチビの両手を無理やり引っ張って顔を上げさせると、黒目がちの瞳が不安そうに俺の顔を見つめた。


「何でこんなとこに隠れてんだよ」

少し苛立った声を出すと、チビが大きく瞳を揺らす。


「……雷」

チビがか細い声で呟く。


「あぁ」

俺はそのとき、さっき和央が俺に囁いた言葉を思い出した。


『サク、たぶん雷がすっごく怖いはずだよ』


「だったら初めからそう言え。今は光ってるだけで距離も遠いから、怖くねぇよ」