「いろいろ大変だったんですね」

河原で遊ぶ朔と和央を優しい目で見守りながら、江麻先生がつぶやく。

「そう、なんですかね……」

全てが落ち着いた今では、大変だったのかどうか自分でもよくわからない。

朔が俺の腕で泣きじゃくっていると、なかなか戻らない朔のことを心配して、加賀美がマンションの駐車場にやってきた。

加賀美が見たのは、俺の腕の中で大泣きする朔。

物分かりのいい朔の一面だけを見ていた加賀美は、その姿にひどく驚いたようだった。

あとから聞いた話によると、加賀美が直接小学校に出向いた日、朔はすぐに加賀美家の養子になることを受け入れたらしい。

俺から引き離すためにかなりの説得が必要だろうと構えていた加賀美は、朔があっさりと了承したことに逆に驚いたそうだ。

朔があまりにも素直に加賀美家の養子になることを受け入れたので、加賀美は朔が俺との暮らしよりも不自由のない生活を望んでいるのだと思い込んだらしい。