「すみません。ここに、大原 朔ちゃんがいると伺ったもので……」
男の姿を上から下まで品定めるように見てから、怪訝に眉をしかめる。
男を警戒しながら無言でドアを閉めようとしたとき、部屋の奥から朔が出てきた。
「君が朔ちゃんかな?」
男が頬を緩めて朔に話しかける。
朔は俺と同様に怪訝な目で男を見ると、俺の後ろに隠れるようにしながらスマホを手渡してきた。
「お兄ちゃん、おじさんから電話」
「親父から?」
朔からスマホを受け取ると、スーツの男が申し訳なさそうに話しかけてきた。
「すみません。私がひとりで直接こちらに伺うと、さっき伝えたものですから」
男の話がいまいち飲み込めない。
玄関で男を待たせたまま電話に出ると、親父の焦った声がした。
「悪い、陽央。もう来てるか?」
よくわからないけれど、親父が言いたいのは目の前の男のことなんだろう。
「来てるってスーツの男?今うちの前にいるけど」