「だったらせめて、その笑い方やめろ。悲しいときに笑うのはやめろ。笑うのは、嬉しいときか楽しいときだろ」
床に拳を押し付けたまま、低い声でそう言って朔を睨む。
その瞬間、俺を見つめる朔の目からツーっと涙が零れ落ちた。涙の雫が、朔の手の甲にぽとりと落ちる。
それが、限界を知らせる合図だった。
「うーっ……」
小さな呻き声とともに、朔の両目から涙が溢れ出して止まらなくなる。
「う、わぁぁぁっ……」
小さな呻き声が大きな泣き声に変わるまで、それほど長い時間はかからなかった。
今まで我慢していたものが一気に溢れ出してきたのか、朔は堰き止められていたダムが崩壊するみたいに激しく泣いた。
「ひとりなんかじゃねぇよ。俺はお前の家族だろ」
朔の肩を引き寄せて包み込む。
腕の中で嗚咽を漏らす朔を、苦しい気持ちで抱きしめた。