実の母親と再会してから、朔は頻繁に病院にお見舞いに行くようになった。
土日は親父が迎えに来て病院に連れて行き、平日は学校帰りに電車とバスで病院に向かう。
一緒に行かないかと何度か朔に誘われたけど、俺はそんな気分にはなれなくて、病院には行かなかった。
「ママ、お兄ちゃんにも会いたがってると思う」
悲しそうな目をした朔にそう言われたけど、俺の心は変わらなかった。
今さら会いたがられたって、そんなの都合よすぎる。
そんな日が続く中、親父経由で病院から連絡があったのは、実の母親と再会して2カ月後のことだった。
朔と夕飯を食べて、なんとなくつけたテレビ番組を見ていたとき、親父から焦った声で電話があった。
「陽央、今すぐ朔と病院に来れるか?」
「今から?」
ドクンと心臓がひときわ大きな音をたてる。
「由希子が危篤なんだ……」
それを聞いた瞬間、意識がぼーっと遠くなるような気がした。
さっきまで普通に聞こえていたテレビの音が、両手で耳を塞いでるみたいに篭って聞こえる。