朔の言葉に、どんな反応を返せばいいかわからない。
似てる、のか。俺はあのひとに。
複雑な思いに支配され、胸の中に苦い感情が広がる。
「ほんと言うとね、お兄ちゃんのこと、最初はちょっと怖くてドキドキした。だけど、これもらってね……」
朔がそろそろと動いて、家の鍵をつけて渡したウサギのキーホルダーを俺に見せてくる。
「それから、ママの病院に行くのに迷った朔を迎えに来てくれて。病院にも連れて行ってくれて。だんだん、優しい顔したときのお兄ちゃんの顔がもっとママに似てるなぁって思うようになって。お兄ちゃんがほんとのお兄ちゃんだったらいいなぁって思うようになって」
窓から差し込む細い三日月の仄かな光に照らされて、キーホルダーのウサギがゆらりと揺れる。
「だから朔は嬉しいよ。お兄ちゃんがほんとの家族で」
俺を見上げて、朔がにこりと笑う。
朔の言葉に、胸の奥が熱くなった。
朔を見つめ返しながら思う。
朔も。朔のほうこそ、あのひとによく似てる。
だって朔は俺の、血の繋がった妹だから。
「ありがとう」
そう答えるのが精一杯で、低くつぶやく声が震えた。