そう思うと同時に、俺は突然やって来たチビの名前を思い出した。


「そういえば新月って、朔とも言うんだっけ」


ひとりごとを呟きながら、ベッドで気持ち良さそうに眠るチビを振り返る。


新月の日に、その月と同じ名前の女の子がやってくるとは……

どんな偶然なんだか。


ベランダからベッドを覗き込むと、チビはまた小さな鼻と口を少しひくつかせていた。

その様子は、やっぱりウサギみたいだ。


チビの寝顔を見ながらくっと小さく声をたてて笑うと、短くなりつつある煙草を口に運ぶ。