舌打ちしながら立ち上がると、俺は煙草の箱とライターを持ってベランダへ出た。


立ち上がったときにローテーブルに置かれた新聞が目に入った。

親父が来たときに忘れていったらしい。

何気なく、それもベランダに持っていく。


ベランダに出て煙草の煙を吐き出すと、ようやく少し苛立ちが消えてきた。


煙草を口に咥えてベランダの柵にもたれながら、新聞を開く。


そのとき、なぜか新聞の端っこにある天気予報欄に目が留まった。

さっきテレビで見た予報と違いないか何となく確かめていると、そこには月の満ち欠けに関する情報も小さく載っていた。


それに因ると、今夜はどうも新月らしい。

ぼんやりと空を振り仰ぐと、流れる雲の間からは小さな星しか見えない。


どおりで、

今夜は月がないわけだ。