自分でも驚くほどの身勝手な感情に苦笑いを浮かべていると、朔が小さく首を横に振った。
「退院じゃなくて、一週間の『いちじきたく』だって」
『いちじきたく』
朔が難しげな顔をしながら、その言葉を噛まないようにゆっくりと慎重に話す。
「一時帰宅?」
「うん。ママの病気はまだ治ってないけど、この頃調子がいいから、ちょっとだけお家に戻っていいって言われたんだって。おじさんが言ってた」
「へぇ」
ということは、朔が今すぐここを出て行ってしまうわけじゃないのか。
そう思うと、心に浮かんだ淋しさが消える。
それもまた身勝手だと思ったけれど、複雑な想いが払拭されると朔の母親の一時帰宅を心から素直に喜べた。
「で?その一時帰宅の日っていつから?」
「今度の土曜日。朝、おじさんが迎えに来てくれるって」
「ふぅん。楽しみだな」
「うん」
朔が明るい表情で、ひときわ大きく頷いた。