奈未とのいざこざがあった週の日曜日。
朔と外に昼メシでも食いに行こうかと思っていたら、親父から電話があった。
「朔にかわってもらえるか?」
電話に出ると、親父は俺に何の挨拶もせず開口一番にそう言った。
「朔、親父」
別に親父と話すことなんてないけど、その態度にちょっとイラついて朔に向かって乱暴にスマホを渡す。
いきなりスマホを押し付けられた朔は、あたふたとしながらそれを両手で受け止めて、耳に押しあてた。
「もしもし……」
顔の小さめな朔がスマホを耳にあてると、それがやたらに大きく見える。
ローテーブルに肘をつきながら見ていると、不意に朔の頬にほんのりと朱がさした。
「ありがとうございます」
親父に受け答えする朔の声のトーンがあがる。
「はい、よろしくお願いします」
スマホを握りしめた朔は、目の前にはいない親父に深々頭をさげてから電話を切った。