「もし嫌じゃなかったら。夏休み、色々と付き合ってもらったお礼がしたいんで」
断られるのが怖くて言い訳みたいに付け加えると、江麻先生がふわりと笑う。
「ありがとうございます。それなら、またぜひ」
彼女がそう返してくれたとき、ちょうど駅のホームに入った電車がゆっくりと停車した。
「また、連絡します」
俺がそう言うと、江麻先生が凭れかかって寝ている朔の下からそっと退いて立ち上がる。
「はい。では、また」
彼女は俺に笑いかけると、軽く会釈をして電車を降りて行った。
江麻先生が降りると、両肩に凭れている朔と和央の重みがずしりとのしかかる。
でも、それがほとんと気にならないほど俺の気持ちはふわふわとしていた。
江麻先生とまた会う機会を繋げたことに浮かれていた。
それからしばらく電車に揺られて、俺たちの降りる駅に電車が到着する。
俺は朔と和央を急いで叩き起こすと、寝ぼけ眼をこするふたりの手を引っ張って電車を降りた。