「お前は母親と早く暮らせることだけ祈ってろよ。いつまでも居候されたら、部屋が狭くてたまんないだろうが」

わざとぶっきらぼうに放った声が、動揺で震える。

内心では朔の言葉に揺れてる。

そのことを悟られるのが嫌で、俺は朔や江麻先生から顔を背けて頬杖をついた。


頬に触れる手の平が熱い。

脈がドクドクと速くなる。

朔の言葉がちょっと嬉しいんだ。

理性よりも身体でそう感じているのがわかってひどく戸惑う。

しばらく朔の顔を見れそうにない。


頬杖をつきながら困っていると、隣で和央が呟いた。


「僕は?兄ちゃんだけずるい」

不満気なその声に、俺は少し笑ってしまった。

小刻みに肩を震わせる俺の耳に、朔の小さい、けれど意志の強そうな声が届く。


「だって、家族だから」

その声は俺のぐっと深く突き刺さるように、俺の胸に響いた。