江麻先生のそばに朔の姿は見えなかった。

きょろきょろしていると、江麻先生が図書館の入り口を振り返って笑う。


「あ、もうすぐ出てくると思います。今本を借りてるから。朔ちゃん、図書館のカードの作り方、知りたかったみたいで。この前海に行った日の帰りに、作り方教えてあげるって約束してしまったんです。勝手にすみません」

「こちらこそ、すいません。図書館のカードの作り方なんて、言えば教えてやるのに」

江麻先生に頭をさげながら、最後はぼやくようにそう言うと、彼女がくすりと笑った。


「いえ、いいんですよ。わたしも朔ちゃんに会えて嬉しいですし。あと、カズくんにも」

「は?」


カズ――…?

江麻先生の口からなぜ和央の名前が出るのか。

その意味を理解しかねていると、彼女の後ろで図書館の自動ドアが開いた。


「兄ちゃん!」

そこから朔と…なぜか和央までが出てきて一瞬呆然とする。