無防備に見上げてくる大きな瞳に思わずドキリとして、江麻先生から慌てて視線を逸らす。


「江麻先生も、俺たちと一緒に海に入ってればよかったのに」

そうすれば、ナンパ男たちに声をかけられずに済んだと思う。

俺から江麻先生のことへと話題を戻すと、彼女が膝を抱えて恥ずかしそうに俯いた。


「ダメなんですよ、私。泳げなくて……」

膝に額を押し付けながら、彼女が頬を染めて鼻先を掻く。


「泳げないのに、海への誘いを了承してくれたんですか?」

だから長袖のパーカー着たままだったのか。その謎が解けるのと同時に、ちょっと呆れてしまう。


「すみません、つい。朔ちゃん、嬉しそうだったから。でも、保護者としてついてきたのに、迷惑かけちゃいましたね」

彼女が顔を隠して恥ずかしそうに笑いながら、視線だけを俺のほうに向ける。

俺に笑いかける彼女の肩はもうさっきのように震えてはいなかった。

かわりに、俺の胸の奥が微かに震えているような。そんな気がして。

俺はさりげなく、彼女の笑顔から視線を逸らした。

その視線の先に、カキ氷を持ってかけてくる朔と和央が見える。


「迷惑とか。全然かかってないんで」

朔たちのほうに視線を向けながらつぶやく。

そんな俺に、江麻先生が微笑む気配がして。

胸の奥が今度は確信的に、強く震えた。