あぁ、怖かったんだ。

ひとりじゃなく、ふたりだったし。

小さく震える江麻先生を見て、俺は彼女をパラソルの下にひとりで残したことをひどく後悔した。

荷物と一緒にまとめて置いていたバスタオルを手に取りぎゅっと握る。

しばらく力の限り握りしめたあと、俺はそれを江麻先生の肩にふわりとかけた。

肩にかかる感触に気づいた江麻先生が、驚いたように俺を見上げる。


「ナンパ、普通にされたことありそうなのに」

震える細い肩をなぜかそっと抱きしめたい衝動に駆られるのを堪えて、俺は彼女に向かってつぶやいた。


「なんですか、それ?」

江麻先生が、膝に鼻先を埋めながらふふっと声に出して笑う。


「普通にモテそうって意味です」

「それはお兄さんの方でしょ?」

「別に、そんなことないですけど」

俯きながら否定すると、江麻先生が上目遣いに俺を見てきた。