中学生を相手にした学習塾で授業を2コマこなして帰宅する頃には、暑くて仕方なかった外の空気もさすがに少しばかり和らいでいた。


電車を降りてマンションへと続く河原沿いの道をぶらぶらと歩きながら、首周りを暑苦しく締め付けていたネクタイを解く。

その瞬間河原から吹く風がすっと喉元を掠めて、どことなく清清しい気持ちになった。

歩きながら何気なくスマホを取り出してみると、また奈未からのメッセージが届いていた。

そこには明日の待ち合わせ場所と時間が書いてある。

奈未から届いた、目がチカチカしそうなくらいスタンプいっぱいのメッセージを見ながら、俺は自然と口元を緩めた。

ぶらぶら歩き続けていると、いつの間にかマンションの前までたどり着く。


二階の自分の部屋を見上げると、窓にはカーテンがかかり、電気も消えてひっそりと静まり返っている様子だった。

スマホに視線を落とすと、時間は23時少し前。

いつもは夜更かしの俺に付き合って0時近くまで起きている朔だが、今夜はもう寝てしまったらしい。

バイトに出かけるときに眠たそうにこちらを見上げていた朔の顔を思い出し、俺はまた口元を緩めた。