塾講師のバイトは、今は週3日。

夏休みになって夏期講習が始まると、持たせてもらえる授業のコマ数が通常より多くなる。

学生にしては割のいい学習塾でのバイトは、長期の休みが稼ぎ時だった。


夏の空は紫がかって紺色に染まりつつあるが、外の出るとやはり暑い。

駅に向かって歩きながら、一度は締めたネクタイの首元を緩めたとき、スマホが鳴った。

確認すると、奈未から『明日、午後から遊ばない?』という誘いのメッセージがきている。

そういえば、ここ最近は以前ほど奈未と会うことに時間を割いていなかった。

前までは、大学が終わるとほとんど毎日と行っていいほど彼女と時間を過ごしてから帰宅していたのに。

ここ最近で、俺には朔を気にして早く帰宅する癖がついていた。

やや我儘な彼女は、そのことに退屈して機嫌を損ねていることだろう。

俺は奈未からの誘いにすぐ返事を打つと、肌に感じる熱い空気に顔をしかめながらバイト先へと向かった。