呑気に誰かと河原に座り込んでいるチビに、無性に腹が立つ。
「朔!」
腹が立って仕方なくて、気がつくと大声でチビの名前を呼んでいた。
朔。
その名前でチビに呼びかけるのは、出会ってから初めてのことだった。
だけど俺はとても腹が立っていて、だから夢中でチビの名前を何度も呼んだ。
「朔!お前、こんなとこで何やってんだよ」
明らかに怒っているとわかる口調でそう言って、チビに……朔に近づく。
俺に名前を呼ばれた朔は、しばらくびっくりしたような顔で俺を見上げて、それからなぜか嬉しそうににこっと微笑んだ。
「お兄ちゃん!」
「お兄ちゃん、じゃねぇよ」
嬉しそうに微笑んだ朔がしゃがみ込んだまま無防備に俺を見上げるから、胸の中がかき乱されたみたいに熱くなって、腹が立っているのか何なのか自分でもよくわからなくなる。