「何やってんだよ」
駆け寄ってきたチビを、呆れ顔で見下ろす。
チビはしばらく俺の傍で俯いて黙りこくったあと、何の前触れもなく急にがばっと顔を上げた。
大きな真ん丸い目が、真っ直ぐに俺を見上げる。
「な、なんだよ……」
あんまり真っ直ぐに見上げられて引き腰になっていると、チビが小さな鼻と口をピクピクと引きつかせ始めた。
何か言う……?
そう思ったとき、チビが小さな口ですぅーっと大きく息を吸う。
「ありがとう!陽央兄ちゃん」
「あ……?」
チビの声が、病院のロビーに大きく響き渡る。
俺は驚きすぎてただ口を開いたまま何も言えなかった。
「ありがとう」
呆然としている俺に、チビがもう一度恥ずかしそうにそう告げる。