何、気遣ってやってんだろ。

なんだか、首筋がむず痒い。

だけど、俺が適当に言った言葉に安心したのか、チビは少し表情を和らげて頷いた。


「じゃぁ、帰るか」

俺はそう言うと、ズボンのポケットから煙草を引っ張り出した。

むず痒くて変な気持ちだから、外に出たら煙草吸おう。


歩きながら、そう思う。


大股でロビーを通り抜けて、病院の入り口の自動ドアの前に立ったとき、チビが後ろからついてきていないことに気がついた。


「なんだよ……」

軽く舌打しながら振り返ると、チビはまだロビーの椅子の前に突っ立っていた。


「おい、早く来い」

病院であまり大きな声は出せない。


周りを気にしながら大きくて招きすると、それまで椅子の前にぼんやりつっ立っていたチビが突然何かに弾き飛ばされたように俺の前まで駆けてきた。