玄関まで歩いて行って中からドアを開けてやると、チビが俺を見上げてぎょっとした顔をした。

チビが帰ってくる時間、俺はいつも大学に行っている。

まさかこんな時間に俺が家の中から現れるとは思わなくて、驚いたらしい。


だからって、そんな顔をしなくてもいいだろうが。


本気で驚いているチビを見下ろして、俺はほんの少し眉をしかめた。


「お前、これから出かけられるか?」


チビの態度に少し気を悪くした俺は、眉をしかめたままやや低い声で問いかけた。


「え……?」

俺の顔を見上げ、チビが鼻を小さく引くつかせる。


どう答えたらいいか、困っているような表情だった。


「とりあえず、入って鞄置け」


俺はドアの外につっ立ったままでいるチビを玄関の中に引き入れると、廊下の壁に背中をもたせ掛けて腕を組んだ。

廊下の壁に凭れて不機嫌そうに腕を組んでいる俺を、チビが大きな黒い目で戸惑ったように見上げる。