そう。別に、そんなんじゃない。
昔好きだった本と、そこに挟まれたシロツメクサの花を見たら、なんだか感傷的な気持ちになった。
ただそれだけ。
チビのためとか……別に、そんなんじゃない。
親父との電話を終えると、俺はパソコンを開いて今聞いたばかりの病院の行き方を調べた。
前にチビが住んでいたという最寄り駅から5番のバスに乗って、20分くらい。
チビが言ってた5番というのは、駅前のバス停のことだったらしい。
それなら、前に住んでいた家の近くのバス停で待っていたとしても病院行きのバスが来るはずがない。
俺はパソコンを閉じると、チビが学校から帰ってくるのを待った。
14時を過ぎた頃、玄関の鍵がカチャリと回る音がする。
それから、カチャカチャとドアノブを捻る音が玄関から響いてきた。
そういえば、玄関の鍵は開けっ放しだった。
それを知らないチビが帰って来て、開いている鍵を閉めてしまったらしい。