急に動機が激しくなる。
行き止まりの終点が僅かに見える。そして、あの濁流音が聞こえて来るのだ。足下は深い谷だ。どうして? 足が震え、勝手に歩みが止まる。
深川先輩はまたしても、気付かずに進んでいく。なんだかふらふらと、何かに憑かれたように。それ以上行っちゃいけない。だめだ。また同じ事を繰り返してしまった。でもどうして? あれほど注意していたのに。何故、曲がり角に気付かなかった? いや、そもそも曲がり角なんてなかった。ここは、昼間見たあの場所ではない。僕は今、《《居るべくして、居る場所に来ているのだ》》。だったら、違う。この先へ行くのは深川先輩じゃない。そいつと向き合わなきゃならないのは、僕なんだ――
<<「行っちゃダメだあ!」>>
ありったけの想いを、声を、あのハイトーンの声を、深川先輩にぶつける。思い切り吸い込んだ息に乗せて。届いてくれ!
「んっ」
深川先輩は、橋を渡った先で、弾かれたように顔を上げる。届いた! 深川先輩が立ち止まる。すると、急に僕の足が動いた。急いで橋を渡って追いかける。間に合った――
もう逃げない。向き合うと決めた。同じ過ちは繰り返さない。ここで終わりだ。
「この先は行き止まりなんですよ」と言って、僕は先を指さす。
「え?」
でも、次の瞬間、自分の口からは、間の抜けた声が出ていた。深川先輩も目を丸くする。
僕が指を差したその先には、満月の月あかりに煌々と照らされて、道が続いていたのである。
――満月の夜に、閉ざされた扉は開かれる。
紗枝さんの言葉が、頭の中でよみがえった。なんということか。壁だとばかり思っていた場所には、見上げる程の大きな扉が開いていたのだ。知らなかった。でもまさか、それが「今」なのか。
行き止まりの終点が僅かに見える。そして、あの濁流音が聞こえて来るのだ。足下は深い谷だ。どうして? 足が震え、勝手に歩みが止まる。
深川先輩はまたしても、気付かずに進んでいく。なんだかふらふらと、何かに憑かれたように。それ以上行っちゃいけない。だめだ。また同じ事を繰り返してしまった。でもどうして? あれほど注意していたのに。何故、曲がり角に気付かなかった? いや、そもそも曲がり角なんてなかった。ここは、昼間見たあの場所ではない。僕は今、《《居るべくして、居る場所に来ているのだ》》。だったら、違う。この先へ行くのは深川先輩じゃない。そいつと向き合わなきゃならないのは、僕なんだ――
<<「行っちゃダメだあ!」>>
ありったけの想いを、声を、あのハイトーンの声を、深川先輩にぶつける。思い切り吸い込んだ息に乗せて。届いてくれ!
「んっ」
深川先輩は、橋を渡った先で、弾かれたように顔を上げる。届いた! 深川先輩が立ち止まる。すると、急に僕の足が動いた。急いで橋を渡って追いかける。間に合った――
もう逃げない。向き合うと決めた。同じ過ちは繰り返さない。ここで終わりだ。
「この先は行き止まりなんですよ」と言って、僕は先を指さす。
「え?」
でも、次の瞬間、自分の口からは、間の抜けた声が出ていた。深川先輩も目を丸くする。
僕が指を差したその先には、満月の月あかりに煌々と照らされて、道が続いていたのである。
――満月の夜に、閉ざされた扉は開かれる。
紗枝さんの言葉が、頭の中でよみがえった。なんということか。壁だとばかり思っていた場所には、見上げる程の大きな扉が開いていたのだ。知らなかった。でもまさか、それが「今」なのか。