急に動機が激しくなる。
「あ、見て、月が出たわ」と深川先輩が言った。
雲が切れて、正面に満月が顔を出していた。
行き止まりの終点が僅かに見える。すると、何やら地の底で蠢くような音が聞こえて来た。足下を見ると、そこは小川のはずなのに、深い谷のようだった。聞こえていたのは濁流の音だ。底が見えない。僕の足は震え、勝手に歩みが止まった。深川先輩は事態に気付かずに、進んでいく。だめだ。それ以上行っちゃいけない――
僕は、そこで理解した。何で気付かなかったんだろう? ここはあの、夢の中の最後の袋小路だ。よりによって深川先輩をこんなところに連れてきてしまったのだ。この先には、例の何者かが居る。足が動かない。僕は叫ぼうとしたけれど、どうしても声が出なかった。
どれだけの間なのか、もどかしく、声にならない声を吐き続けた。すると、やっと足が動いた。見えない深淵にためらったが、思い切って一気に橋を駆け抜けて、先へ行く。
「深川――先輩?」
呼びかけてみた。けれど、返事はない。
袋小路の終端に着いた。けれど、夜の時間のその場所は昼間と全く雰囲気が異なっていた。しかも、正面にはそびえるように漆黒の壁が立ち塞がっているのだ。
いつの間にか濁流の音が聞こえなくなっていた。そして――深川先輩は居なくなっていた。
全く理解が出来なかった。道の終点の、他に行き場のない袋小路のこの場所に、先に着いたはずの深川先輩の姿が見あたらないのである。そして、唐突に浮かんだある考えに僕は混乱した。ここに壁があるという事実が示すこと、まさか――
しかし、ほどなくしてその絶望を確信させられるた。はるか前方遠くからかすかに深川先輩の声がするのだ。ああ、壁の先へ深川先輩は行ってしまった。
僕には手の届かない所へ――
「うわぁあああっ」
「あ、見て、月が出たわ」と深川先輩が言った。
雲が切れて、正面に満月が顔を出していた。
行き止まりの終点が僅かに見える。すると、何やら地の底で蠢くような音が聞こえて来た。足下を見ると、そこは小川のはずなのに、深い谷のようだった。聞こえていたのは濁流の音だ。底が見えない。僕の足は震え、勝手に歩みが止まった。深川先輩は事態に気付かずに、進んでいく。だめだ。それ以上行っちゃいけない――
僕は、そこで理解した。何で気付かなかったんだろう? ここはあの、夢の中の最後の袋小路だ。よりによって深川先輩をこんなところに連れてきてしまったのだ。この先には、例の何者かが居る。足が動かない。僕は叫ぼうとしたけれど、どうしても声が出なかった。
どれだけの間なのか、もどかしく、声にならない声を吐き続けた。すると、やっと足が動いた。見えない深淵にためらったが、思い切って一気に橋を駆け抜けて、先へ行く。
「深川――先輩?」
呼びかけてみた。けれど、返事はない。
袋小路の終端に着いた。けれど、夜の時間のその場所は昼間と全く雰囲気が異なっていた。しかも、正面にはそびえるように漆黒の壁が立ち塞がっているのだ。
いつの間にか濁流の音が聞こえなくなっていた。そして――深川先輩は居なくなっていた。
全く理解が出来なかった。道の終点の、他に行き場のない袋小路のこの場所に、先に着いたはずの深川先輩の姿が見あたらないのである。そして、唐突に浮かんだある考えに僕は混乱した。ここに壁があるという事実が示すこと、まさか――
しかし、ほどなくしてその絶望を確信させられるた。はるか前方遠くからかすかに深川先輩の声がするのだ。ああ、壁の先へ深川先輩は行ってしまった。
僕には手の届かない所へ――
「うわぁあああっ」