奈緒さんの話を要約すると――
西川代表と木島さんは競い合っている部分があって、どちらも互いに、少なくとも相手よりは面白いと思っているらしい。言ってみればブービー争いである。それが近頃、木島さんが一瞬芸の類の分野に、ほんの少しだけ才覚を見出したのである。
言われてみればあの夜のやり取りでも、「纏足」の場面ではもうちょっとで笑いが出かかった。それを西川代表が嫉妬しているふしがあるとのことらしい。
――対抗意識を燃やしている?
「笑いの才能がないことが大前提だったのに、木島さんが『あちらの世界の人』ということになりますから」
ここの閉じた世界もなにやら、複雑でやっかいなようである。とにかく西川代表は、何とか成果を、結果を出したいと焦っている。それでカジ谷君がとばっちりを受けているらしいのである。
「実験とは言え、あんなことをさせるなんて。身内以外にも迷惑がかかる恐れがあったし、止めようとはしたのですが」
「そう。実際、僕がとばっちりを受けた形だし」
「そのことに関しては、申し訳なく思っています」と言って、奈緒さんは顔を伏せる。
「だから、せめて影響を身内の範囲だけに収めようと試みてはみたんですが」
なんと、あの日、通りかかった浴衣姿の女子の一人が奈緒さんだったというのである。あれは偶然ではなく、意図的に仕組まれた「安全装置」だったというのだ。
衝撃の事実。そうだったのか!
「でも、そこに予想外に真堂さんが現れて――」
僕は余計なことをしたのか――テーブルに突っ伏して、深々と頭を抱えた。
西川代表と木島さんは競い合っている部分があって、どちらも互いに、少なくとも相手よりは面白いと思っているらしい。言ってみればブービー争いである。それが近頃、木島さんが一瞬芸の類の分野に、ほんの少しだけ才覚を見出したのである。
言われてみればあの夜のやり取りでも、「纏足」の場面ではもうちょっとで笑いが出かかった。それを西川代表が嫉妬しているふしがあるとのことらしい。
――対抗意識を燃やしている?
「笑いの才能がないことが大前提だったのに、木島さんが『あちらの世界の人』ということになりますから」
ここの閉じた世界もなにやら、複雑でやっかいなようである。とにかく西川代表は、何とか成果を、結果を出したいと焦っている。それでカジ谷君がとばっちりを受けているらしいのである。
「実験とは言え、あんなことをさせるなんて。身内以外にも迷惑がかかる恐れがあったし、止めようとはしたのですが」
「そう。実際、僕がとばっちりを受けた形だし」
「そのことに関しては、申し訳なく思っています」と言って、奈緒さんは顔を伏せる。
「だから、せめて影響を身内の範囲だけに収めようと試みてはみたんですが」
なんと、あの日、通りかかった浴衣姿の女子の一人が奈緒さんだったというのである。あれは偶然ではなく、意図的に仕組まれた「安全装置」だったというのだ。
衝撃の事実。そうだったのか!
「でも、そこに予想外に真堂さんが現れて――」
僕は余計なことをしたのか――テーブルに突っ伏して、深々と頭を抱えた。