「なあ桑原、占いを信じるか?」
「全く信じない」
「自分の直感を信じるか?」
「直感と言うか、自分を信頼している――と思い込むようにしている」
「そうか――」
問答はそこで途切れる。
桑原は起き上がって、しばらくテーブルの上のシャープペンシルを無言で回していたが、やがて口を開いた。
「何を迷っているんだ?」
「うーん。実は、な――」と、僕は一昨日の夜と、昨日の出来事を順に話した。そして、ついでに占いで示されたキーワードのことも。桑原は時折、眉毛を上下に動かしながら、興味津々の様子で聞いていたが、僕が話し終えると一気に、まくし立てて来た。
「面白いな、それ。何なんだ? 本当なのか? 新手の宗教勧誘か詐欺、にしては内容が理解に苦しむし、何かの冗談にしては全く笑えないな。真面目なんだとしたら――それがある意味一番恐いかもな」
「だろう? 絶対にそんなの、行かないよな、普通。でも、占いの通りとも思えるふしが」
「占いはどうだか知らんが、興味があるんなら、要は、そのカジ谷とかいう奴が信用できるかどうか、の話だろ?」
「興味と言うか、気になってはいる。カジ谷君は――よくわからんが、悪い奴ではないように思える。ちょっと好ましいと思ってしまった自分もいる。認めたくないけど。でもなあ」
ややしばらく、うんうんと転がっていると、何事かをじっと考えていた様子の桑原が、意を決したように口を開いた。
「よし。どうしても自分で決められないのなら、決めてもらえばいいのだ」
「え、誰に」
「その前に、だ」と、桑原は改まって言う。
「お前が決めるのは、どちらの結果になっても、それに本当に従えるのか。言い換えると、決定権を自分以外の何かに委ねて、その決定を受け入れることを納得できるか、ということだ」
桑原得意の演説調である。
「納得できないなら死ぬほど悩んで自分で決めろ。ただ、大事なのは――」と、語気を強める。
「このままだとお前が選びそうなのが『このまま何もしない、自分で選ばない』という選択肢だ」
確かに、そうなりそうな予感はある。
「そうするのは『行かないことを選んだ』のと結果は同じだが、意味合いは天と地ほどに変わって来る、ということをお前が意識しているかどうか、だ」
僕は閉じていた目を開いて上半身を起こした。演説は続く。
「全く信じない」
「自分の直感を信じるか?」
「直感と言うか、自分を信頼している――と思い込むようにしている」
「そうか――」
問答はそこで途切れる。
桑原は起き上がって、しばらくテーブルの上のシャープペンシルを無言で回していたが、やがて口を開いた。
「何を迷っているんだ?」
「うーん。実は、な――」と、僕は一昨日の夜と、昨日の出来事を順に話した。そして、ついでに占いで示されたキーワードのことも。桑原は時折、眉毛を上下に動かしながら、興味津々の様子で聞いていたが、僕が話し終えると一気に、まくし立てて来た。
「面白いな、それ。何なんだ? 本当なのか? 新手の宗教勧誘か詐欺、にしては内容が理解に苦しむし、何かの冗談にしては全く笑えないな。真面目なんだとしたら――それがある意味一番恐いかもな」
「だろう? 絶対にそんなの、行かないよな、普通。でも、占いの通りとも思えるふしが」
「占いはどうだか知らんが、興味があるんなら、要は、そのカジ谷とかいう奴が信用できるかどうか、の話だろ?」
「興味と言うか、気になってはいる。カジ谷君は――よくわからんが、悪い奴ではないように思える。ちょっと好ましいと思ってしまった自分もいる。認めたくないけど。でもなあ」
ややしばらく、うんうんと転がっていると、何事かをじっと考えていた様子の桑原が、意を決したように口を開いた。
「よし。どうしても自分で決められないのなら、決めてもらえばいいのだ」
「え、誰に」
「その前に、だ」と、桑原は改まって言う。
「お前が決めるのは、どちらの結果になっても、それに本当に従えるのか。言い換えると、決定権を自分以外の何かに委ねて、その決定を受け入れることを納得できるか、ということだ」
桑原得意の演説調である。
「納得できないなら死ぬほど悩んで自分で決めろ。ただ、大事なのは――」と、語気を強める。
「このままだとお前が選びそうなのが『このまま何もしない、自分で選ばない』という選択肢だ」
確かに、そうなりそうな予感はある。
「そうするのは『行かないことを選んだ』のと結果は同じだが、意味合いは天と地ほどに変わって来る、ということをお前が意識しているかどうか、だ」
僕は閉じていた目を開いて上半身を起こした。演説は続く。