帰り道で、深川先輩が言う。
「気に入った人しか占ってくれないのよ。ずいぶん熱心に見てくれた感じだったわ」
「そうなんですか」
僕は気に入られたということだろうか。どんな基準なんだろう。深川先輩は、僕が気に入られると確信していたようにも見えるけれど。
「的確なアドバイスしてくれるよね」と、深川先輩は同意求めるかのように言う。的確、というよりむしろ、謎かけのようだったけれど。
「あれは占い、じゃないんですか?」
「本職は精神科の先生なのよ」
「……」
「占いはご本人の趣味で、ついでにそこでちょっとだけ、本職の知識を生かした助言とかも。ボランティアって言ってるけれど」
それなら、もっと具体的な助言が欲しかった気もする。今一度、確認するように紗枝さんの占い結果を声に出して反芻してみたが、やはり謎であった。
「ううん。確かにちょっと謎っぽいわね。珍しいわ。でも、そうは聞こえなかったかもしれないけれど、たぶん、言った通りのことなのよ」
深川先輩はそう言って、混乱する僕に微笑んで見せる。その言い方は、深川先輩まで占い師のような――
紗枝さんは、本人曰く「オーラが見える」そうなのである。条件が揃えば、とは言っているけれど。オーラというのは、その人を識別する「気」のようなもので、うまく説明はできないけれど、それは人それぞれ違うものなのだ、と言う。見えない僕には今一つピンと来ない。不思議、とはそのあたりに関連しているようだけれど「大した話じゃないから」とお茶を濁されたのであった。
「でも、鏡を探せ、って――この部分も本職のアドバイスなんですかね?」
「本職以上に趣味に力を入れてるって言ってたから」
「本当なんですか」
すると深川先輩も首をかしげて
「ただ、恐いくらい当たる、って私の周りでは有名」と、そこだけなぜか声を潜めて言うのである。
自分の中に迷い込んでいる――まさかと思った。その、同じセリフをカジ谷君から聞いたのだ。きっかけもあった。昨夜出た声は、自分でも思ってもみなかった「響く声」だった。わずかながらの光明に思えた。だとすれば、今が「その時」なんだろうか。
だったら――
どのみち現状が手詰まり状態なのは間違いない。信じてみてもいいかもしれない。と、この時は思ったのだ。
「気に入った人しか占ってくれないのよ。ずいぶん熱心に見てくれた感じだったわ」
「そうなんですか」
僕は気に入られたということだろうか。どんな基準なんだろう。深川先輩は、僕が気に入られると確信していたようにも見えるけれど。
「的確なアドバイスしてくれるよね」と、深川先輩は同意求めるかのように言う。的確、というよりむしろ、謎かけのようだったけれど。
「あれは占い、じゃないんですか?」
「本職は精神科の先生なのよ」
「……」
「占いはご本人の趣味で、ついでにそこでちょっとだけ、本職の知識を生かした助言とかも。ボランティアって言ってるけれど」
それなら、もっと具体的な助言が欲しかった気もする。今一度、確認するように紗枝さんの占い結果を声に出して反芻してみたが、やはり謎であった。
「ううん。確かにちょっと謎っぽいわね。珍しいわ。でも、そうは聞こえなかったかもしれないけれど、たぶん、言った通りのことなのよ」
深川先輩はそう言って、混乱する僕に微笑んで見せる。その言い方は、深川先輩まで占い師のような――
紗枝さんは、本人曰く「オーラが見える」そうなのである。条件が揃えば、とは言っているけれど。オーラというのは、その人を識別する「気」のようなもので、うまく説明はできないけれど、それは人それぞれ違うものなのだ、と言う。見えない僕には今一つピンと来ない。不思議、とはそのあたりに関連しているようだけれど「大した話じゃないから」とお茶を濁されたのであった。
「でも、鏡を探せ、って――この部分も本職のアドバイスなんですかね?」
「本職以上に趣味に力を入れてるって言ってたから」
「本当なんですか」
すると深川先輩も首をかしげて
「ただ、恐いくらい当たる、って私の周りでは有名」と、そこだけなぜか声を潜めて言うのである。
自分の中に迷い込んでいる――まさかと思った。その、同じセリフをカジ谷君から聞いたのだ。きっかけもあった。昨夜出た声は、自分でも思ってもみなかった「響く声」だった。わずかながらの光明に思えた。だとすれば、今が「その時」なんだろうか。
だったら――
どのみち現状が手詰まり状態なのは間違いない。信じてみてもいいかもしれない。と、この時は思ったのだ。