マスターはなんだか懐かしそうな顔をして、そして、ギターを愛おしそうに奏で、そして、歌ってくれた。それは――あの「木洩れ日」の歌。


 Coffee Breakのあとで

 After Coffee Break あなたが席を立った
 私はまだここで やることがあるから
 通りを渡って行く あなたを見送った

 After Coffee Break 見慣れた街の景色に
 しばらくあなたが いないと思うと
 特別な場所の 意味もわからなくなる

  あなたの夢をかなえてあげたいと
  誰かの言葉をなぞっているように

 After Coffee Break まぶしさに目を細め
 遠ざかるあなたの背中に 手を振った


 After Coffee Break 長く続いた雨が
 上がる時きっと 答えも見つかるかな
 変わらないことが 決まり事のような日々

  あなたと二人歩いてきた道が
  ここから先も続いているのなら


 After Coffee Break 午後の日差しの中で
 穏やかにに今日も くり返すひとときに
 忘れてはいけない事 思い出した

 After Coffee Break 出会った頃と同じ
 あなたの笑顔に ずっとみちびかれて
 「自分らしさ」の迷路も 抜け出せそうな気がする

  あなたと同じ未来へ向かいたい
  変わらぬ願いをきっと叶えよう

 After Coffee Break 通りの向こうから
 久しぶり あなたが笑顔で 手を振る時


 深川先輩は、放心したような表情だった。これから「本物」の歌声を聴きに行くというのに、である。