「あ、あの……すみません。
私ったら、余計なことを……」

どうしよう。実のお母さんを事故で亡くしたって
課長から聞いたばかりなのに……。
あまり思い出したくないことだったかもしれないのに。
申し訳ないことを言ってしまった。
だがロンさんは、アハハッと笑った。

「気にしなくてもいいよ。結衣。
俺は、義理の母に感謝をしているんだ!
荒れて遊んでいた俺をずっと励ましてくれた。
今は、可愛い双子の妹が出来て楽しく
やっているんだよ」

私は、それを聞いて課長の言う通りだと思った。
この人は、たくさんの悲しみを背負ってきたのだろう。
だが、それ以上に努力家であたたかい人だった。

その後に妹さんの写メを見せてもらった。
年の離れた双子の女の子で
フランス人形みたいな美少女だった。
金髪碧眼でロンさんに似ていると言ったら
嬉しそうに笑っていた。

妹さんが可愛くて仕方がないのだろう。
素敵な兄妹なんだろうなぁ……と思った。
私は、一人っ子だから羨ましく思う。
楽しく朝食を食べ終わったら
会社に行く時間になってしまった。
そして、ロンさんもアメリカに帰るらしい。

「珍しいな?
お前が1日で帰るなんて」

「今回は、日向の偵察に来ただけだからね。
仕事もあるし、これからのことを考えて
やることがある」
 
そう言いながらロンさんは、ニヤリと笑った。
きっと帰ったら
トレーニングを開始する気だろう。

努力家のロンさんなら
きっと、そうするだろうから。
私は、そう思った。
 
「ほう……?まぁ、早く帰ってくれて
精々するけどな」

「酷いなぁ~少しぐらい寂しがってよ。
まぁ、いいや。次に会う時は、パラリンピックだ。
俺に当たるまで負けるんじゃねぇーぞ?」

「あぁ、お前もな」

そう言いながらお互いに拳を合わせる課長とロンさん。
信頼と仲の良さが伝わる光景だった。
何だか微笑ましい……。