数人の女子観客は、それを見て
キャーキャーと熱い声援を送っていた。
モテモテなのだろう。
それを見て凄いなと思った。

すると次は、課長の出番になった。
周りは、一瞬にして静まり返る。
永井さんと違い圧倒的な存在感があった。
私は、ドキドキしながら祈っていた。
課長……頑張れ!!

課長は、合図の号砲が鳴ると他の選手と共に
走り出した。相変わらず綺麗なフォームで姿勢がいい。
そして何より速い。
彼もまたぶっちぎりで1位になった。
周りをあっと言わせるだけの存在感がある。

「やった~!!」

私は、嬉しくなり声を出して喜んだ。
すると隣で見ていた夏美さんが
「キャアッ~相変わらず素敵だわ。
日向さんの筋肉……」と違うところで喜んでいた。

後で課長に聞いたが夏美さんは、
課長に惚れている訳ではなく。
課長の鍛え上げられた筋肉に惚れているらしい。
筋肉フェチだとか……。
しかも他に好きな人が居るとか。

何とも紛らわしい……。でも勘違いで良かったわ。
ホッと胸を撫で下ろした。
すると課長が走り終わり戻ってきた。

「お疲れ様です。亮平さん」

私は、すぐさまタオルと飲み物を手渡した。
課長は、お礼を言うとタオルを受け取り拭いてくれた。
するとアナウンサーが次の種目とクラスの
お知らせが流れた。800メートル。
視覚障害のクラスだ。

「結衣。ちゃんと見ておけ。松岡ペアが走るから」

課長がニヤリと笑いながら私に言ってきた。
私は、返事すると松岡さんペアを捜した。
すると先頭で見つけることが出来た。
赤いユニホームを着ておりサングラスをかけていた。
ガイドランナーと加藤さんは、黒のユニホームだ。

800メートルは、トラックを2周走ることに
なるのだが、一体どうやって走るのだろうか?
違う意味でドキドキしながら見守った。

スタートラインに着くと
松岡さんは、ガイドランナーの加藤さんが
持っているバンド?みたいなのを握っていた。
そして声と共に号砲が鳴る。
他の視覚障害を持っている選手と共に走り出した。
しかしそれは、驚かされることばかりだった。

勉強して頭で理解したつもりでも身近で見ると違う。
彼らは、ガイドランナーの誘導に従い
真っ直ぐ走り、カーブになるとまるで
見えているかのようにスムーズに曲がっていた。