「は、はい。何でしようか?」
思わず考え込んで話を聞いていなかった。
驚いて返事をすると課長は、ハァッとため息を吐いた。
呆れたように……。
「まったく。今からウォーミングアップするから
お前も付き合え」
「えっ?は、はい。」
私は、慌てて返事した。
そして私を連れて周辺を軽くジョギングした。
すると走りながら
「不安がらなくてもいい。心配をするな。
俺は、絶対に負けないから」と言ってくれた。
もしかして私に気を遣って……?
人のことをよく見ている課長は、
私が不安がっているのを気づいて声をかけてくれたのだろう。
いつもそうだ。優しいから……。
「大丈夫です。私は、亮平さんのことを
信じていますから」
立ち止まり気持ちを伝えた。
私は、課長のことが大好きで大切だからこそ
信じたい。諦めたらダメなんだ……。
今も変わらずにそう信じたい。
「そうか……」
課長も立ち止まり優しくて頭を撫でてくれた。
心臓がドキッと高鳴った。
課長……。お互いに見つめ合っていると
「日向さん」と課長に声をかけてきた人物がいた。
危ない…もう少しでキスをする雰囲気だった。
周りに人がいるのに恥ずかしい……。
私は、恥ずかしがりながらも
声をする方を見ると2人組の男性だった。
「おはよう松岡。それに加藤さん」
「おはようございます」
「聞きましたよ。日向さんがまた選手として
パラリンピックに出場する気になったんですね。
いや……嬉しいな」
親しげに話す彼は、どうやら目が見えないようだった。
目を開けているが目線が合っていない。
だがニコッと笑っていた。