「楽しくなんてないわよ。毎日散々だしさ。
楽しいのは、綾音でしょ?
大好きな水泳のインストラクターをやっているのだから」

綾音は、高校時代水泳の選手だった。
今は、スポーツクラブで水泳のインストラクターとして
生徒に指導をしている。

「お陰様で。ねぇ、良かったら
私の働いているスポーツクラブに入会してみない?
1日無料お試し期間もあるし」

すると綾音が驚くことを口に出してきた。
あまりの驚きでビールを噴き出しそうになる。
ゲホッゲホッと咳き込んだ。

「で、でも……」

「今は、昔と違って記録を気にしなくてもいいのだし
身体を動かすつもりでやってみなよ?
ダイエットだと思ってさ」

まぁ確かに……もう昔と違う。
高校時代の陸上では、エースとして
優勝ばかり考えていた。

だから記録が出せなくなったことや
インターハイに行けなくなったことが
辛くて辞めた。
陸上の物を全て捨てるぐらいに悩みながら

するとフッと課長の顔が浮かんできた。
何故だか分からないけど自信に溢れた
課長の言動を思い出したら悔しくなってきた。

「……分かったわよ」

そして突き動かされた。
この事を聞いたら課長に馬鹿にされそうで
悔しかったからかもしれない。

私だって……やれば出来るし。
そう思いながら私は、綾音の働いている
スポーツクラブに体験入会として入ることを決めた。

体験入会は、日曜日に行うことになった。
施設の中に入ってみると思ったよりも設備も
整っており広い。
陸上の他にテニス、水泳、バスケなどなど
それに合った場所が提供されている。

へぇ~こんな場所にこんなスポーツクラブが
あったんだ?知らなかったわ。