「篠原コーチ。ウォーミングアップが終わりました」

課長がウォーミングアップを終わらせて
こちらに向かって来た。
ドキッと心臓が高鳴りだした。
しかしその時だった。受付の人がこちらに来た。

「日向さん。お客様がお見えです」

「お客……?」

課長が不思議そうに言った。一体誰かしら?
課長が受付の人に案内されて行ってしまう。
私は、気になってお手洗いに行くふりをして
ついて行った。すると課長があの綺麗な女性と
会っているところを目に映った。
な、何で?あの人が……!?

まさか……やり直したいと言いに来たの?
だとしたら私は、どうしたらいいの……。
胸がギュッと締め付けられそうになった。
見てるのが辛くて慌ててその場から
逃げ出すように立ち去った。

その後。私は、体調が悪いと嘘をついて早退した。
自宅に帰るとベッドで泣いてしまう。
あんな綺麗な人にやり直そうと言われたら
誰だって受け入れてしまうだろう。
課長だって……きっと。

それに比べたら私は、地味で何も取り柄がない。
こんな女に……勝てる自信なんてない。
それが悔しくて情けなくて涙が溢れて止まらない。
私は、別れたくない……。

変わりたいと決意したばかりなのに
やっぱり私は、ダメな人間なんだ……。
ネガティブな事ばかり考えて沈んでいると
インターホンが鳴った。こんな時に誰だろうか?
出る気力もないので居留守を使おうとしたら
今度は、ドンドンと思いっきりドアを叩かれた。

「結衣。居るんだろ?開けろ!!」

その声は、課長だった。
明らかに怒った声で怒鳴っていた。
私は、思わずビクッと震え上がった。
なっ!?何で……怒っているの?

具合が悪いとなれば普通は、心配をするだろうし
むしろ怒りたいのは、私の方だ!
なのに……どうして?

「さっさと開けないとドアをぶち壊すぞ!!」

えぇっー!?
すると思いっきりガンッとドアを蹴り飛ばす
音が聞こえてきた。有言実行の課長のことだ。
本当に破壊しかねないので私は、慌てて
玄関に行きドアを開けた。
すると明らかに不機嫌な課長の姿があった。
その姿に思わずビクッと震え上がった。