「亮平だ。日向亮平」

「随分と可愛らしい名前……」

そう言おうとしたらギロッと物凄く怖い表情で
睨まれた。ビクッと肩が震えた。
えっ?これも……地雷なの!?
あまりにも怖い表情をするのでビクついた。
なら下の名前ならどうかしら?

「じ、じゃあ……亮平さんで」

慌てて課長の下の名前を呼んでみた。
すると課長は、少し照れたのか恥ずかしそうにしながらも
黙ったまま私の手を握ってきた。
照れているのかしら?

何だが、こちらまで照れてしまう。
だが握られた手は、とても優しくてあたたかった。
一緒に会社に出勤すると同じ部署の皆に驚かれてしまった。

あ、私……昨日の服のままだわ!?
自分の格好に今、気づいた。これだと
課長と何かあったと言っているようなものだ。
どうしよう……恥ずかしい。
恥ずかしくて慌てて自分の席に座った。
すると紺野さんが私に

「ねぇ、もしかして昨日合コンを抜け出てから
課長とずっと朝まで一緒に居たの?」と
興味津々と尋ねてきた。

「あの……それは……」

朝まで一緒に居たと聞かれドキッとした。
あぁ、どうしよう。
この格好だと言い訳をしたとしても
かなり無理があるし……。

「えっ?黙っているってことは、マジなの?
嘘っ~やっぱり二階堂さんって課長みたいな人が
タイプなの?」

「マジかよ?二階堂さんって物好きだったんだな」

他の女性の先輩達だけではなく男性達まで言われる。
しかも笑いながら……。酷い。
別におかしなことをしている訳ではないのに。

だけど、そんな風に笑われたり
物珍しそうに言われると余計に恥ずかしなってきた。
どうしよう……涙が出てくる。
下を向き涙が溢れそうになるのを必死に我慢していた。
しかし、その時だった。課長は、
バンッとデスクを叩きつけてきた。
一同シーンと静まり返った。